2009年03月24日

サンフレッチェ広島の変則4バックの正しい使い方

 大宮アルディージャも鹿島アントラーズも、サンフレッチェ広島に対して同じ戦法で試合に臨んできた。4トップ気味のハイプレッシング・サッカーである。DFラインでも徹底的にパスを繋いで攻撃を組み立てる広島の戦術を逆手に取ろうというわけだ。これに対して広島のDF陣は、それぞれの試合で異なる対応を見せた。


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 大宮戦で広島の最終ラインは、3バックの両サイドに位置する槙野と森脇がサイドに開き、ボランチの森崎和がCBに加わり、4バック化することで大宮のプレッシングを回避しようとしていた。しかし、これはとんでもない判断ミスだった。大宮は、両サイドハーフが前線まで上がり、4トップ気味に広島のDFラインにプレッシャーを掛けようとしていた。それに4バックで応じてしまっては、4対4と完全にマッチアップしてしまう。

 自陣ゴール前での数的同数は、攻撃側が不利になる。なぜなら守備側は、この位置で相手に抜かれても決定的なピンチには繋がりにくく、逆にボールを奪えたなら絶好のチャンスを迎えることができるため、積極的にボールにチャレンジに行ける。それに対して攻撃側は、こんなところでボールを奪われれば大ピンチだ。セーフティーな選択肢を選ばざるを得ない。仮に無理をしてドリブルで相手FWを抜き去ったとしても、次の瞬間にボールを奪われれば、自陣でDF側が数的不利の状況に陥ってしまう。

 大宮戦でもストヤノフがFWをドリブルで交わしたシーンがあった。けれどもストヤノフの前方に位置し、パスの受け手となるはずだった青山が、最終ラインの数的不利に気づき、急いでカバーに下がってしまった。それによりパスの出しどころを失ったストヤノフは、ペナルティエリア付近で大宮のプレス網に包囲され、ディフェンシブ・サードでは最大のタブーとされる「ドリブルでボールを失う」という醜態をさらすことになってしまった。このプレーは、よほど悪印象だったらしく、大宮戦後ネット上はストヤノフ批判一色だった。

 J2でも対戦相手が4トップでハイプレスを仕掛けてくることはあった。けれどもその際は、特に問題が起きなかった。それはなぜかというとストヤノフ〜佐藤寿のホットラインが機能していたためである。ストヤノフのロングパスと佐藤寿のDFライン裏への飛び出しによって相手の最終ラインを押し下げ、試合序盤でハイプレッシングサッカーを無効化することが出来ていたのだ。

 プレスが効いていない状況で4バック対4トップと数的同数ならば、今度はオフェンス側が優勢である。守備は「チャレンジ&カバーが原則」というように、カバーする選手がいてこそボールを奪いに行ける。それが数的同数ではチャレンジして交わされても余ってカバーしてくれる味方はいない。ディフェンス側は、軽々しくボールを奪いには行けず、ボール保持者が余裕を持って攻撃を組み立てるのを距離を取って見つめるしかなくなるというわけだ。だからこそ昨シーズンの広島は、パス数で2位のセレッソ大阪の18733本を大きく引き離す23418本という驚異的な記録を残すことが出来たのである。だが、J1ではJ2のように相手のプレッシングを簡単に無力化させられない。大宮戦ではマト、冨田に20分も粘られ、鹿島戦では後半に入るまで最終ラインを押し下げられなかった。

 プレスが掛っている局面において一番重要なことは、最終ラインで数的優位をつくることである。鹿島戦では4対4となってしまった大宮戦の反省を踏まえた結果だろう。槙野と森脇が中央に絞り、鹿島の2トップとマッチアップし、一人余ったストヤノフがフリーで攻撃の起点として機能していた。しかし、ここで問題が一つ発生する。ストヤノフがドリブルで中盤まで攻め上がってしまったことにより、ミキッチと服部の両翼がSB化してしまい、サイドの基点を失ってしまったのだ。

 サイドが引き下げられたということは、中央が底上げされたということでもある。ならば中央突破を狙えば良いのではないかと言いたいところだが、そうもいかなかった。雨でスリッピーになったピッチが、コントロールミスを誘発し、柏木が中心となってコンビネーション・プレーで局面を打開しようとするが、鹿島の堅いセンターの守備を一向に突破できなかった。雨さえ降らなければ状況も違ったのだろうが、天気だけはどうしようもなかった。

 大宮戦で課題だった最終ラインからの攻撃の組み立てにはある程度めどがついたとみていいだろう。問題は高い位置でボールを奪いに行けない守備戦術のなさである。確かに5−4の9人の守備ブロックで引いて守りを固めたのは、スペースを消されると攻めあぐねるという鹿島の攻撃の弱点を突いていたが、寿人を封じ込められるとロングカウンターが機能せず、サンドバック化してしまうというデメリットを考えるとあまりうまい選択ではなかった。森脇、槙野とスピードなる選手が揃っていたのだから、前に出てプレスを掛けるという選択肢も用意してほしかったところである。

 ちなみにDFだけでなくGKも含めて数的優位をつくるという方法もあるにはあるが、理論的にはアリでも、そこまでやっているチームが世界でも5指に満たないことを考えると現実的ではない。理想を追うにしても再降格の危機を脱するほど勝ち点を稼いでからで良いのではないかと思う。


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posted by hume at 18:09| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なるほどあの試合にはそういう意図があったのですね〜
Posted by 名無しのもっじ at 2009年03月26日 14:42
少し疑問が残ったのでコメントさせていただきます。

>自陣ゴール前での数的同数は、攻撃側が不利になる。なぜなら守備側は、この位置で相手に抜かれても決定的なピンチには繋がりにくく、逆にボールを奪えたなら絶好のチャンスを迎えることができるため、積極的にボールにチャレンジに行ける。それに対して攻撃側は、こんなところでボールを奪われれば大ピンチだ。セーフティーな選択肢を選ばざるを得ない。仮に無理をしてドリブルで相手FWを抜き去ったとしても、次の瞬間にボールを奪われれば、自陣でDF側が数的不利の状況に陥ってしまう。

この場合の「自陣ゴール前」とは、守備側・攻撃側どちらのことを言うのでしょうか?
Posted by さく at 2009年03月27日 21:33
>さくさん
攻撃側です。
Posted by hume at 2009年03月28日 14:38
>humeさん

返信ありがとうございます。

攻撃側の自陣での数的同数という状況がイメージしづらかったため
上のような質問になってしまいました。すいませんでした。
Posted by さく at 2009年03月28日 14:58
私はあなたが本当に私の主題を理解する助けと言いたい ヒュームのサッカー学習ノート
Posted by seo services vancouver at 2012年03月03日 01:18
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