2005年09月14日

G大阪×広島 その2 〜リベロが試される意味〜

中盤・前線のプレーヤーがいずれも高いテクニックを持っているガンバの攻撃は、ショートパスを主体としたパス交換を基本に、ドリブル突破でアクセントをつけながら局面を打開するというものである。ボールよりも後方にとどまるのは3人のCBと橋本の4人のみで、「目の前にスペースがあれば、必ずアタックすべき」というアーリゴ・サッキの言葉どおり、ボールのないところで何人もの選手が動き、スペースに走りこむため、攻撃の最終局面に5〜6人が参加することもけして珍しくない。
不用意にボールを失い、カウンターを食らうことを恐れるサンフレッチェは、中盤のパス交換には時間をかけずに、出来るだけすばやく前線にボールを運ぼうとする。ところがガンバには、いずれの選手も高い技術を持っているので、不用意にボールを奪われることがあまりない。そのうえ、ボール保持者の周囲が積極的に動き、複数のパスコースを創る、参加意識の高さがあるので、中盤のボールポゼッションも容易になるわけである。
最終ラインから前線に向け、ロングボールがフィードされることもあまりない。下がってきたボランチかサイドMFにボールが渡り、そこから攻撃が組み立てられる。その組み合わせにも決まったパターンがあるわけではなく、ドリブルやコンビネーションで局面を打開し、ゴールに迫ることになる。シュートを打つまでに10本以上パスがつながることもあり、いかにもブラジル人を中心とするチームらしいサッカーが展開されている。

このように魅力的なサッカーを繰り広げるガンバの攻撃力に屈した形の、サンフレッチェのディフェンス陣はどうだろう。もともとサンフレッチェの採用する4−3−1−2は、中盤の底にディフェンシブなMFを2枚置いた4−4−2に比べて、守備面のリスクが高いフォーメーションである。コンパクトな陣形を敷き、前線からすばやくプレッシングで相手をサイドに追い込むと、2〜3人で囲い込んでボールを奪い、攻撃につなげるアグレッシブな守備をほぼ90分間続けることで、小野監督は守備面のリスクを最小限に抑えている。
そのため3人のMFで構成される中盤の両サイドの2人には、殺人的な仕事量が要求される。マイボールの局面では、攻撃をサポートして前に上がり、ボールを失った瞬間、カバーリングに戻らなくてはならない。30〜40メートルを繰り返し往復するだけでなく、逆サイドにいけば、今度は中央の危険ゾーンをしっかりケアする任務がある。つまり走力やスタミナに加えて、的確なポジショニングを保つ必要があり、そのための危機察知能力を兼ね備えていなければならない。茂原と李をプレーのクオリティーで遥かに上回る森崎浩司が、サイドでほとんど活躍できなかった原因がこれである。チーム全体のバランスを考えて、組織的なメカニズムを機能させるには、必ずしも質の高い選手を使うのが正解とは限らない。むしろ、質より量といった、凡庸でも献身的に走り続けられる選手の方が、有用である場合が多い。量より質といったユース黄金世代が活躍できない理由もそこにある。

しかし、この試合では、サイドに森崎浩司ではなく、李・ベットといった量の面でも高いパフォーマンスを発揮できるプレーヤーが配置されていたにもかかわらず、何故4失点も喫してしまったのであろうか。その理由を解説する前に読者の方々に読んでもらいたい記事がある。

今日(9・14現在)の中国新聞に「森崎和リベロOK」という記事である。小野監督が練習で森崎和幸を3バックの中央・リベロで起用したという内容だが、記事からは、この練習に小野監督のガンバ戦での反省が生かされていることが見て取ることができる。

相手にサイドを深く切り崩された場合、中央から人数を割かなければならないことがある。ガンバ戦でのサンフレッチェではSBがサイドに釣り出されても、基本的にMFがディフェンスラインの中央に出来た穴のカバーに入ることはない。原則として逆サイドのSBが中央へスライドすることでカバーすることになっている。この場合、それまでSBが埋めていたスペースが空いてしまうことになる。逆サイドのMFがカバーすればよいのだが、サンフレッチェでは逆サイドのスペースをカバーすることよりも、中央の守りを固めることを優先して、サイドのMFは中央にポジションを絞るため、逆サイドのスペースが空白になってしまう。このスペースをガンバにうまく使われてしまったため、サンフレッチェのディフェンス陣は、ガンバのサイドチェンジに振り回されてしまったのである。
MFが最終ラインのカバーに入らない弊害は、サイドチェンジに脆いということだけにとどまらない。この試合の3点目・4点目の失点がそれだ。どちらもCBがサイドに釣り出されてしまい、中央に空いたスペースを狙われての失点である。SBがカバーに入っても、中央の守りが2人しかいない。中央のスペースを埋めきれずに失点を喫してしまったのである。サンフレッチェはSBが積極的に攻めあがるスタイルのため、SBの裏をとられることが多い。そのため、CBがディフェンス・ラインから飛び出さなければならないシーンがよく観られる。これまでは、ジニーニョ・小村の職人芸的ディフェンスや下田のスーパーセーブのおかげでなんとか守りきれていた。しかし、個々の得点力の高いガンバのような相手には数的優位をつくらなければ、このように容易く失点してしまうのだ。
この問題の解決策として、小野監督が考えたのが森崎和幸のリベロ起用である。森崎和幸をリベロで修行させることで、最終ラインへのカバーリングの感覚を掴ませるねらいだ。小野監督の狙い通りに森崎和幸がSBとCBを結ぶラインに入ることで数的優位をつくり、敵のセンタリングを弾き返せるようになれば、このような失態を繰り返すことはないだろう。我々の指揮官は只者ではないのだ。
posted by hume at 19:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
イ じゃなくて り。
Posted by リ at 2005年09月14日 20:33
おや。
ごっちゃに覚えてしまってたようですね。
修正しておきます。
ご指摘ありがとうございました。
Posted by hume at 2005年09月14日 20:37
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